第一章 看護人間工学とは

看護のためのエルゴノミクス(人間工学) 入門

第1章 看護のためのエルゴノミクスとは

エルゴノミクスは、日本では人間工学と呼んでいることが多い。注1

エルゴノミクスとは、生活者にとっては「使いやすさの科学」、

開発者にとっては「人間に適合した機械やシステムを設計すること」

である。

看護のためのエルゴノミクスとは、

患者にとっては、 より快適な療養環境が与えられること

医療・看護にとっては、 サービス提供のし易さのこと

である。

看護のエルゴノミクスの元祖は F. ナイチンゲール(1820〜1910)である。

表1.1 看護覚え書きの章構成 青色がエルゴノミクスに関係している

表1.1ナイチンゲール

表1.2 第8章 ベッドと寝具類の内容

表1.2

注1

日本では人間工学と訳されることも多いが、世界的に見ればエルゴノミクスという言葉が一般的である。アメリカでもヨーロッパでも、アジアでも同様である。人間工学という言葉は1920年代には既に使われており、古くから存在すると言える。日本ではいずれの言葉も通じるが、本書では国際的に通用するエルゴノミクスで統一する。

ミニ情報

エルゴノミクスは図1.1のように、4つの学問領域を土台として成立した学問である。

図1.1基礎となる科学技術

図1.1 エルゴノミクスを支える4つの学問領域

エルゴノミクスでは人間と人間が取り扱うマシーンを一つのまとまり(系)として考える (これを人間機械系という) 。系はシステムと訳され、人間機械系はマン・マシンシステムとも呼ばれる。これが全体の枠組みとして存在し、それを各方面から研究している。その目的は、人間の生理的・心理的・または動作・行動の特性に適合した機械やシステムを設計することである。なお、ここで言う機械は工場にあるような種類のものだけではない。看護の分野で使われる医療機械、車椅子のような機器やベッド、生活の中で使われる自動車なども含めた広義の機械である。(注1終わり)

エルゴノミクスで病院を見ると

上で述べた人間と人間が取り扱うマシーンを一つのまとまりとして考えるとはどういうことか。

病院で考えてみよう。

病院の中の人

機械

環境

これらを表1.3 のように一覧表として示す。

表1.3 看護の場でのひと・もの・環境

表1.3

看護のためのエルゴノミクスとは、このようなひとやもの(マシーン) を対象とする学問である。特にそれらの間の「関係」が重要なポイントである。関係というと、なーんだそうなのかと簡単に思われそうなので、付け加えておく。ひととものそして環境の間の関係により、ひとはなんらかの感情を持つ。従って関係は重要である。図1.2 は、ここで述べたことを関係を強調するために図に示したものである。

図1.2看護MMシステム

図1.2. 院内エルゴノミクスのひと・もの・環境の関係

幾つかの実例

次の例は、病院内と訪問看護・介護老人保健施設における実例である。

表1.4 事例一覧表 ひと・もの・環境の関係の例 演習は、授業の一環として行う

表1.4